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天狐あやかし秘譚

第36章 正真正銘(しょうしんしょうめい)


☆☆☆
まずいことになった。

圭介が振りかぶった大ぶりの拳をステップバックして避ける。避けた拳がそのまま床に突き刺さる。人間の力ではない。

ホシガリ様が離れた後、圭介が何かを飲み込んだ。おそらく、あれはホシガリ様に作らせた神宝『生玉』だろう。生玉は人間の身体能力を爆発的に高める効果がある、と伝えられている。良いニュースは、あの『生玉』が、真の神宝ほどの力がない、ということくらいか。

いや、もうひとつあったか。
私は圭介の横薙ぎの蹴りを姿勢を低くしてやり過ごす。

こいつは、喧嘩慣れしていない。パワーを使いこなせていない。

だが、それは私も同じこと・・・。
一応一通りの戦闘訓練は受けているものの、基本は結界と後方支援を担当する祭部衆。祓衆ほどの戦闘経験はない。

避けることはできるが、有効打を与えることもまた出来ない。

可能であれば石針を打ち込んで昏倒させたいのだが、なかなかそれが出来ずにいる。いくら喧嘩慣れしていないからといっても、生玉で底上げされた筋力がある以上、相手が放つ全ての打撃がこちらにとっては致命傷だ。

端的に言って、怖い。

「おのれ!ちょこまかと!」

どこぞの三流悪党のようなセリフを吐きながら圭介が手近に落ちている角材を投げつけてくる。

危ない・・・。あの力で投げられれば、石礫ひとつでも弾丸一発、いや、それ以上の殺傷力がある。

ああ・・・結界を張るゆとりもない。

「宝生前さん!」
綾音さんが声をかけてくる。危ないから来ちゃダメでしょ!声をかけたいけど、少しでも集中を解いたら、あっという間にミンチになってしまう。

「お前!まだ邪魔するか!」
圭介の注意が一瞬それた。しめた!

私はポケットから石釘を取り出すと、彼の足元に3本投げつけた。彼を取り囲むように最小の結界である三角形を形成する。

「石鳴り 土公 南斗 黄門を閉じよ」

呪言に反応し、三つの頂点が形成する三角柱状の結界が発生する。
だが・・・

バリン!

圭介の拳一発であえなく結界が破壊されてしまった。
・・・強すぎでしょ・・・。あれでも、五公クラスなんですけどね・・・。
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