第36章 正真正銘(しょうしんしょうめい)
「駄目です。ホシガリ様が不死である以上、ダリさんに勝ち目はありません。なんとか、圭介から真名を聞き出し、ホシガリ様のコントロール権を奪わないと!」
宝生前が圭介に向かって駆け出す。草介もそれに続いた。
「圭介の方は、お願い!宝生前さん」
宝生前に告げ、私はダリの方に駆け寄った。
「綾音さん!一体何を!」
「試してみたいことがあるの!」
そう、異界での『私』として過ごした日々を思い出し、私には考えがあった。もし、これがうまくいけば・・・、少なくとも不死の呪いは解ける・・・はず。
「ダリ!」
「綾音・・・。下がってろ!」
「ダリ、そのまま彼女を押さえていて!試したいことがある」
私が言うと、ダリが私の方にちらりと目をやった。
「何か・・・あるのだな?」
頷く。
「よし、分かった!」
ダリが槍を横向きに持ちホシガリ様に押し付けると、彼女はそれを両手で掴んだ。そのまま力任せに押し倒す。
これである程度近づいてもホシガリ様に攻撃されることはなさそうだ。
よし!
「ねえ!私・・・浦原綾音!覚えている?私達、ずっと一緒だったよね?」
私達は異界でとは言え、意識を共有した身だ。話をすることで活路が見いだせる可能性がある・・・と思ったのだが。
「ぐるるるるる・・・!」
ホシガリ様は牙をむき出しにし、目は完全に理性の色を失っていた。鬼女さながらにダリの槍を押し返そうと力を込めている。もしかしたら、圭介の呪のせいで、普通の状態ではないのかもしれない。
それでも・・・。
「ねえ!あなたの名前、まだわからないのだけど・・・お願い!私の話を聞いて!」
「がああああ!!!」
ダメだ。意識が全くこっちを向かない。筋肉がさらに隆起し、とうとう、ダリの槍を押し返してしまった。
「ちっ!」
押し返される勢いを利用し、ダリが地面を蹴ってバク転、私の側に着地をした。
「何をしようとしたのだ?主は!」
「ダメ!全く声が届かないの!なんとかならないの?ダリ!」
そう、声が届かなければ私の考えた作戦は実行に移せない。やっぱり、圭介から彼女の真名を聞き出さないと・・・。でも、彼が言うとは思えない。
他に・・・他に彼女の真名を知っている人は・・・。