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天狐あやかし秘譚

第35章 窮鳥入懐(きゅうちょうにゅうかい)


「こんな遠距離からも命が届くとは・・・」
衝撃で倒れた宝生前が体を起こしながら毒づく。

ホシガリ様がその肩の上に圭介を乗せる。いつの間にか、彼の手の指の拘束は外されていた。

「ホシガリ様!こいつらは浮内の敵。そのお力もって、殺め給え!」

まだ・・・まだ彼女に人を殺させる気か!
まだ、彼女の心を踏みにじる気か!

「ダリ・・・」
ゆらりと立ち上がる。許せない・・・絶対に許さないんだから!

「ダリ、お願い・・・。壊して。この歪みきった屋敷を壊して!彼女を解放してあげて!」

「な!?」
宝生前が抗議の声を上げかける。
「承知」
ダリがにやりと笑う。

「やめろ!屋敷を壊すなど!!」
圭介が顔を引き攣らせた。彼が何かを命じたのだろう。ホシガリ様がダリめがけて突っ込んでくる。

ダリが槍の石づきを地面に突き立てる。

「久方の天より落つる 雷よあれ
 叢雲を散らし逆巻け 山風よ吹け」

呪言に応え、ダリの古槍がまばゆい光を放った。
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