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天狐あやかし秘譚

第34章 銘肌鏤骨(めいきるこつ)


☆☆☆
この夜を境に、『私』と左近次は頻繁に交わるようになった。左近次が『私』の中で果てると、ふわふわとした優しい気持ちになることができた。

幸せだった。

この暗い屋敷に囚われていたとしても、それを忘れさせてくれるほどに、左近次のぬくもりは『私』を満たしていった。

だけど、そんな日も、永遠ではなかった。

数年間、過ぎた後、左近次が病を得てしまう。いくら精のつく食べ物を与えても、薬を出しても、彼の身体がやせ衰えているのを止めることが出来なかった。

ついには、『私』の身体を保っている足玉や生玉を与えたが、それは功を奏さなかった。『私』には効があるのに、左近次を癒やすことは出来なかった。

おそらく、この領巾の力では、完全な神宝を再現できないからだと思われた。急速にやせ衰えていく左近次は、ついに死の淵まで追いやられる。

「ホシガリ様・・・ホシガリ様・・・」
『なんじゃ・・・左近次・・・』
「無念にございます・・・。私がここで死ねば、ホシガリ様を誰が慰めるのでしょう・・・。」
『死ぬなどと、言うでない・・・。主が、再び妾を慰めてくれれば良い』
「ホシガリ様・・・。私は・・・私は・・・貴女様を愛することができて、幸せでございました」
『妾もじゃ・・・。妾も、本当に・・・幸せであった・・・』
「ありがたき・・・」

それが、最期の言葉だった。

手を握りしめて、三晩、泣き続けた。
弔わなければと、屋敷の一部屋の床を抜き、そこの土中に葬り、墓を建てた。

こうして、『私』は、また一人になった。
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