第5章 夢幻泡影(むげんほうよう)
☆☆☆
「私の人生・・・何なんだろう」
たまに、負けそうになる。その度に、頑張ろうって思うんだけど。
特にこういうときはダメだ。何かがうまく行かない時、ああ、独りなんだって思ってしまう。
「はあ・・・」
大きなため息が出る。まあ、今に始まったことじゃないのだが。
この公園には中央の遊び場をぐるっと囲うようにベンチが設えてある。暗くもなってきているし、住宅街の中程にあるという立地からして、私以外に人はいない。
「帰ろ・・・」
重い足取りで立ち上がる。そのとき、初めて気がついたのだが、誰もいないと思っていたが、私が座っているベンチからふたつあけた先のそれに人影があった。
子ども?
目を凝らすと、どうやら4〜5歳位の小さな女の子のようだ。その子は、何か模様がついたジャンパースカートのようなものを身につけており、顔を伏せていた。
よく見ると、肩が小刻みに震えている。
泣いているの?
なんだか、小さい頃の自分を思い出し、思わず、私はふらりと歩き出し、女の子のそばでしゃがみこんだ。
「どうしたの?」
迷子かもしれない、と思ったのだ。周囲を見ても保護者らしき人はいない。
黄昏時、まだオレンジの光が周囲に満ちているが、ゆっくりと、着実に日が落ちていく。
おそらくあと10分もしないうちに周囲は宵闇に包まれることだろう。
「おとうさんか、おかあさんは?」
女の子は顔を伏せたまま黙って首をふる。
「おうちは近いの?」
なおも尋ねてみるが、女の子はふるふるとまた首を振るばかりだった。
うーん・・・困ったな。お巡りさんを呼んできたほうがいいのかな?
かと言って、この子をこのまま放置していくのも・・・。
110番をしようか?こんなことでしていいのかな?でも、それしかないか・・・。
「ちょっと、待っててね」
少し離れたところで電話しようと踵を返すと、ぐっと服の裾を掴まれた感触がある。振り返ると、先程の女の子が私の服を小さな手で掴んでいた。
困ったな・・・。
ここで、私は改めて彼女を見た。白いジャンパースカートに赤い模様・・・
いや、模様じゃ・・・ない?
え?!
よく見ると、模様と思ったのは飛び散った血だった。夕日に照らされていたので色味がよくわからないが、服の模様たるにはふさわしくない、赤黒い血の色だった。