第31章 誨淫導欲(かいいんどうよく)
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【誨淫導欲】性的に乱れたことを教えて、性欲を刺激すること。
エッチなことはすっごい愉しいから、みんなでエロエロしましょう、みたいな。
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二人の男の4本の腕が私に迫る!
その瞬間、私は素早く荷物の中から手のひら大のシルバーのケースを引っ張り出すと、そこに入っていた長さ5センチほどの石の釘を取り出し、畳に突き刺した。
私のこの一見意味不明な行動に、男たちの行動が一瞬止まる。
ええと・・・確か・・・
「中央 黄龍 思慮 打ち締めよ」
この私が唱えた呪言に反応して、『ズン』と、重低音が石釘から響いた。
目には見えないが、その音は術者から石釘を結ぶ線の延長線上に扇形に広がる。今の場合、私に襲いかかってくる二人にもろにぶち当たるわけだ。
「があっ」
その音は男たちの脳髄を芯から揺さぶり、脳震盪のような状態にさせる。その衝撃によって、二人はのけぞり、仰向けに倒れ込んだ。
気を・・・失ってくれた?
やった!成功した!
この石釘は宝生前から護身用として預かっていたものだった。石釘を渡された時、先程の呪言も教えてもらっていた。
よかった・・・何十回も唱えて練習した甲斐があったというものだ。
今、私が使ったのは陰陽術の一種、土の術式だ。石の釘を媒介にして、人の脳に揺さぶりをかける術。一種のスタンガンのような効果を持つと教えられた。殺しはしないが、気絶させることは十分にできるということだった。
30年前、この島に調査に来た陰陽師達が帰ってこなかったと言われていた時点で、何かしらの危険があることは予想されていた。もちろん、私についてはダリが守ってくれる、という前提ではあったが、この間みたいに結界内にいて探知されない、という事態がないとは限らない。そこで、宝生前が護身用にくれたのが今使った石釘だった。
『この釘そのものに霊力がこもっていますので、発動の言葉さえ間違わなければ綾音さんでも使えます』とのことだった。
すっごくよく見ると、5センチ足らずの細い石の釘にびっしりと何かの文字が刻んである。作るのがとても大変そうだ。
倒れた男たちを見て考える。
『輿入祭の夜は、お楽しみの夜』
『どの男が、どの女を犯しても・・・』
『文句は言えない』