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天狐あやかし秘譚

第5章 夢幻泡影(むげんほうよう)


☆☆☆
東北旅行から帰ってきた私達は、今月末には追い出される私の部屋にいた。そう、ダリは結局家までついてきたのだった。

もうしょうがないと思い、頭の中で『こいつは置物、イケメンのポスター』と頭で唱えて、無視することにした。ところが、私が眠ろうとすると、ダリも当たり前のように布団に入ろうとする。

「え!?ちょ、まって、一緒に寝る気?」
「ん?嫌なのか?」
さも、心外といった風情だ。
自慢じゃないが、うちは狭い。狭いキッチンに寝室兼ダイニングという非常に日本的な間取りだ。確かに、ベッドはひとつしかないので、ダリが部屋にいる以上、彼が眠るにはこうするしか・・・いやいや、まずいでしょ。
そもそもダリがここにいる事自体まずい。

侃々諤々と議論を交わした結果、ダリは「仕方がないのぉ」と、新たな変化を見せてくれた。
頭の先から足の先まで完全な狐になったのである。(これを『狐モード』と呼ぼう)全身フサフサの金色の毛皮、これはこれで・・・ありかも。・・・ちょっと、可愛い。
別の意味で抱きつきたくなるのを我慢する。

「こうすれば、こちらで丸くなって眠れなくもない」
そんな私の内心の欲望などつゆ知らず、何やら不服そうにダリがくるりとベッドの足元の方で丸くなった。たしかにこれなら、まあいいか。

こうして、私があまりに強固に反対したことで、昨晩、ダリは狐モードで寝てくれていた・・・はずだった。

だが、朝起きたらこうである。
狐神モードのダリが何食わぬ顔で私に抱きついて、すやすやと眠っている。

寝て起きたら、男前が目の前にいて、心臓が止まるかと思った。
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