第21章 大声疾呼(たいせいしっこ)
「押せ!」
土御門が更に気合を込める。ジリジリと鬼道の周囲が削れていく。しかし、中から湧き出す闇もまた勢いがあり、両者は拮抗しているかのように見えた。
「もう少しなのに!!クソ!結界、出力上げーい!」
土御門が言うと、後ろに控えている設楽が無線で何やら指示を伝えている。おそらく、ビルの屋上などに控えている祭部に結界強化の指示を出したのだろう。
「土御門さん!早く!あんま長く押さえられん!」
河西の背中を石剣で押さえつけている左前が悲鳴を上げる。河西が必死に起き上がろうとしており、その力に負けそうになっているようだ。
「ぐああああ・・・仲間・・・呼べないいい・・・なんでええ!?」
どうやら、左前があの石の剣で押さえている限り、河西は女怪を呼び出すことができないらしい。前の時はあの鬼道から女怪を溢れかえらせたことでダリや土御門の術を破ったというので、左前が河西を押さえつけていることはほとんど生命線と言ってもいいのだろう。
結界が強くなったようだ。お陰で更に鬼道が小さくなる。ダリと土御門が更に力を込めた。ボロボロと鬼道が崩れていく。
「やめろ、やめろ、やめろおおお!私の居場所なんだ、私の、私のぉ!!!」
河西が喚き、嘆き、悶える。
「私を、私だけを、私をぉ!!愛してくれるってぇ・・・いっったのにいいい!!」
その言葉はおぞましい妖魔の叫びではあったが、私には悲鳴に聞こえた。悶え苦しみ、哀切を極めた女の悲鳴に・・・。
私は先程の異界での出来事を思い出していた。
そうだ、彼女は、河西佳苗はこう言っていたじゃないか・・・。
『親からも顧みられず、誰からも助けられず、優しかった男は自分を性欲のはけ口にした』
『なんで許せるんだよ!自分以外の女抱いている男を!嘘ついた男を!なんでだよぉぉぉぉ!!!』
もしかして、あれって、自分のことだったのではないだろうか?
倖田令児は、河西を騙して・・・仲間がいて・・・性欲のはけ口って・・・。
そう思った時、連想で、いやなイメージが私の中に浮かんだ。
河西は、倖田に騙されて、レイプされたのではないだろうか・・・。
もし、そうだとしたら、そうだとしても・・・
『自分以外の女を抱いている、嘘付いている男』なのに『愛してくれるって言った』と。
もし、私の想像通りなら、なんて・・・なんて酷いことなんだ。
