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天狐あやかし秘譚

第17章 幽愁暗恨(ゆうしゅうあんこん)


☆☆☆
敷島は慄いていた。
必死に呪言を唱える。彼女は簡易な呪具と呪言、そして愛用している鈴が放つ清浄な音で周囲を浄化し続けている。

結界範囲は直径約3キロ。

そして、その範囲の状況は術者にある程度把握ができる。
故に敷島には状況の異常さが認識できていた。

なんで?なんでこんなに、女怪が・・・。

結界の範囲内。知覚できるだけでおおよそ1万もの女怪が湧いている。

おかしい・・・。いくら河西が生霊として強力な妖力を持っていたとしても、これだけの女怪を寄せ集められるわけがない。

ちなみに敷島が今張っている結界は外からの侵入を防ぐものではなく、結界内の邪気を鎮めること、結界内から外に邪気を漏らさないことに特化している。女怪の影響力を最小にし、これ以上広げないための結界だ。

今、この地区には一般人も多くいる。その人達がこの女怪の群れを認識しないで済み、霊障を受けないでいられるのは、この敷島の張っている結界のおかげである。

それでも、ある程度霊力を持っている人は、障りを受けてしまうだろうな・・・。
もっと強く、もっと広く抑えないと・・・。

女怪たちはある点を中心にぐるぐると旋回しているように感じる。
その中心に、この膨大な怪異が湧き上がっている元となる場所がある・・・と思う。

そこにいるの?あなたは何をしているの?河西佳苗・・・。

そこまで考えた辺りで、周囲の闇がゆらぎ始めるのを感じた。金属の符が燐光をより強く放ちだす。・・・妖魅が近づいている証拠だった。

まずい・・・気づかれた?
ダメ・・・来ないで!

ビルの屋上、フェンスを次々と女怪が登ってくるのを感じる。
金属の符から青い稲妻が走り、フェンスを登ってくる女怪たちを打つ。打たれた女怪はフェンスから落下していくが、次から次へと登ってくるのできりがない。

この分じゃ、あと10分ももたない・・・
早く・・・誰か・・・中心を・・・女怪を引き寄せている中心をなんとかして!

りん・・・

額に汗をにじませながら、敷島はまたひとつ鈴を鳴らした。
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