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天狐あやかし秘譚

第16章 鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)


悔しかったし、悲しかった。あんなのを信じてしまった自分に怒りが湧いた。
もちろん、撮られた画像で脅されてまた犯されるという不安もある。
いつ、誰にあれを見せられ、辱められるかわからない恐怖もある。

だが最も大きいのは、絶望感だった。

あんな男たちに、いいように身体を弄られて、心まで変えられてしまった。
何もかも変えられてしまった。そして、もう、前の自分には戻れないという確かな感覚があった。

たぶん、あの男たちから離れても、私は何度も何度もあの狂宴を思い出し、自分を慰めてしまうに違いない。卑猥な愛撫を、媚薬入りのローションを、下卑た言葉責めを、肛門への挿入を、求めてしまう。また、あの男たちに身を任せてしまう。

逃げられない・・・。

それが、私の絶望感の正体だった。

その日、本当は出勤だったが、私は休みを取った。そのまま、会社は退職した。
ひたすら家に閉じこもり、膝を抱えていた。
いつ、倖田の呼び出しがあるか。期待してしまっている自分にまた絶望していた。
暗闇でひたすらに奴らを呪い、同時に渇望もしていた。
どうすることもできない心を抱えて、一人狂ったように呻き続けるしかなかった。

どれだけ時間が経っただろう。その頃は、昼も夜もわからなくなっていた。
ふと、気づくと、部屋に影が立っていた。

女性のようだった。影のようで、顔はわからない。
この世のものではないと分かっていたが、不思議と畏れはなかった。
その人影は、すぐに二人、三人、と増えていった。

増えるに従い、私の頭に声が響く。
「力を・・・」
「・・・思い知らせよう・・・」
「取り戻す・・・」
「壊せ・・・」
「喰らい尽くせ・・・」
「・・・押しつぶせ・・・」
「こっちに・・・こっちに・・・」
「・・・おいで・・・いっしょに・・」
声が何重にも響く。幾重にも幾重にも重なる怨嗟の声。すぐにわかった、皆同じだ。踏みにじられ、騙され、蹂躙され、奪われ、犯され、殺された・・・。

私と同じ、仲間・・・行かなくちゃ・・・行って、一緒になって・・・
そうすれば、私は・・・

あいつらを・・・殺せる・・・
令児を、喰らい尽くすことができる。
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