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天狐あやかし秘譚

第112章 神機妙算(しんきみょうさん)


☆☆☆
「はえ〜・・・」

先方からのメールで案内された部屋を見て、私は感嘆の声を上げた。てっきり自分のホテルの部屋か、ないしはラウンジなどでの会合かと思いきや、個室を一部屋借り切っての話し合いときたものだ。さすがは政治家、といったところだろう。

と、いうよりも、よほど聞かれたくない話なのでしょうねえ・・・
その上・・・

「質問をするな、とはどういう意味なんでしょうね」
宝生前が私の疑問を先に口にする。

そうなのだ、先程送られてきた江藤の秘書を名乗る男性からのメールには、この会合の場所と時間だけではなく、『会合中、江藤様へのご質問は厳に控えていただくようお願いします』とあったのだ。

まあいいか・・・。
たとえこちらから質問できなかったとしても、実際に目の当たりにすればわかることもたくさんあるのです。

私達は会合予定時間の10分前にはこの部屋についていた。なので、まだ対象者である江藤は来ていない。時間を少し持て余した私は、部屋の中をキョロキョロと見回していた。会合場所に指定されていたのは、中華レストランの個室である。おそらくは小規模の商談などをするための部屋なのだろう。丸テーブルがひとつあり、テーブルセッティングがされてあった。メールに『江藤様はお昼代わりに点心でも一緒にいかがでしょうかとおっしゃってます』と書かれてあったので、時間的にやや遅いが、昼食を奢ってくれるつもりらしい。一体何を食べさせてくれるのだろうと考えていると、約束の時間ぴったりに扉が開き、当の御本人であるところの江藤氏が入ってきた。

「よく来てくれました」

スタスタと部屋に入ると、当たり前のように上座に座った。端正に短めに切りそろえられたさっぱりとした髪型に、見るからに上質そうな紺のスーツを着こなしている。嫌味ではない程度に明るい色のネクタイもおしゃれな感じを演出していた。全体的に『清潔』を絵に描いたような出で立ちだ。

顔つきは優しそうではあるが、その瞳は意思の強さを感じさせた。ギラギラとした出世欲をオブラートに包んでいるような、そんな印象を持った。

江藤が軽く手を上げ、ウェイターに合図をすると、次々と料理が運ばれてきた。まずは茉莉花茶、それから前菜の盛り合わせにフカヒレスープなどなど。フカヒレスープの良い香りに思わずお腹が鳴りそうになるのを必死で堪える。
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