第91章 人面獣心(じんめんじゅうしん)
看守は円形の広場の鉄扉の鍵を開くと、そこから出ていった。広場には、彼が出ていった扉とは反対側にそれより二周り大きな両開きの鉄扉があった。
中央にいる女たちは、後ろ手に縛られたまま、俯いて震え、互いに寄り添っている。そうでもしないと恐怖で気が触れてしまいそうになっているのだ。
なぜなら、ミオにも分かるほど、明らかに、その両開きの扉の向こうには、とてつもない異形の気配があったからだ。
ドン!
扉が叩かれた。
ドン!ドン!
再び。
音が鳴るたび、中央の女性たちはもちろん、牢に囚われている者たちも、一様に震え上がっていた。鉄扉には機械仕掛けの閂がかけられていたのでそうそう開くことはない、と思ってたとしても、なお恐ろしいのだ。
そして、何度か扉が叩かれたのち、誰かが何処かから操作したのだろう、ガチャリと音がして、無情にも鉄扉の閂が外れ、扉が開かれた。
ぬうっとそこから現れたのは、白装束に身を包み、頭に紫色の頭巾のようなものを被った大男だった。頭巾は看守たちと違って、目のところすらあいておらず、一体あれでどうやって視野を確保しているのかと不思議になるような構造をしている。
ただ、そんな頭巾の構造なんかよりも異常だったのは、その男の筋肉であった。身長は2メートルに達するのではないかと思うほど大きく、四肢の筋肉は見たことがないほど発達していた。肩幅も広く、肩の筋肉もぼこりと盛り上がっている。
《ぶぐ・・・もっ・・・》
ソレが異常な『音』を発した。それは声というにはあまりにも奇妙だった。明らかに男が発しているのだが、どこから発しているのかわからないのだ。そしてさらに異常だったのは、男の発した『音』の意味が理解できたということにあった。
『お前らが贄か』
そして、その『贄』という言葉にはイメージも付き従った。その場にいた女性たち全てが、その瞬間に理解した。
『贄』という言葉が意味するのが、性的な凌辱、しかもこれまで味わったことがないほどの異常な性行為の強要であるということを。
「いやああっ!!!」
中央にいた女性のひとりが走り出した。それを皮切りに5人の女性たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。
《ずもぉっ・・・・ぐぶっ・・・》
『ことろ、か・・・肴よの・・・』