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天狐あやかし秘譚

第91章 人面獣心(じんめんじゅうしん)


☆☆☆
ミオは、攫われてここにつれてこられたときのことを思い出していた。時間の感覚がもはやはっきりとはしないが、あれは多分4ヶ月ほど前のことだ。

ミオは平凡なOLだった。印刷機を販売する会社の事務を担当している。小さい会社だったけど活気があって仕事は楽しかった。年末、忘年会シーズンだった。ミオの会社では特に課や係単位での忘年会は実施されず、気の合う有志で飲みに行くというスタイルだった。ミオもその日、仕事を教えてくれていた先輩の女性に連れられてタイ料理の店でエスニックとビールを楽しんでいた。

ほろ酔い気分で先輩と駅で別れ、自宅マンション近くの駅で降りた。駅からマンションまで歩いて7分という好立地だというのはミオの密かな自慢だった。

その7分の間のことだった。少しだけ人通りがないところを通らなければならない瞬間があった。そこで、ミオは後ろからハンカチのようなもので口を押さえつけられてしまう。首のあたりに鋭い痛みを感じたと思ったときには、意識がなくなっていた。

後で思えばスタンガンのようなもので気絶させられたのだと思う。
そして、気がついたときには茶色っぽいワンピースみたいな服を着せられ、私物は時計から何から全て奪われたうえで、『ここ』にいたのだ。

周囲には自分と同じように何処かから攫われてきた女たちがいた。自分が閉じ込められている座敷牢と同じような牢獄が、ぐるりと一つの円形の部屋を囲むように配置されていた。一度数えてみると、その数は1階に12、2階に12の合計24あることがわかった。

どうやら、ほとんどすべての部屋で、一部屋につき5人ずつの女性が捕らえられているようだった。毎日の食事と排泄、風呂などに不自由することはなく、むしろ、食事などは栄養バランスなどがよく考えられたものだといえた。健康な身体を維持するよう言われ、定期的な運動が義務とされるが、それ以外はとくに何をされることはなかった。拉致監禁、というより、飼育されている、というのが適切な表現のように思えた。

かといって、ずっと安全であるわけではなかった。同室の女性に聞いてみると、数週間に一度『供物だ』と言われて、ひとりずつ女が牢から連れ出されることがあるのだという。連れ出される女性に法則性はないようで、皆一様に次は自分ではないかと恐れおののいているというのだ。
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