第1章 薬屋
フードを深く被った店主に、ローはカウンターに近づくとポケットから紙切れ一枚をポケットから取り出して、カウンターの上に置いた。
「この薬草を頼む」
「···、かしこまりました」
店主であるはメモされた紙を受け取ると、背後にズラリと並んだ薬箪笥から次々に取り出して行く。
の様子を見ながら、ローは問いかける。
「なぁ、この辺りには珍しい薬草が多いのか?」
「···、いえ」
余程寡黙な店主なのだろうと、ローはそれ以上は何も言わなかった。
できる事ならば自ら採取して帰りたいと思ったのだが、薬屋を生業にしているのならば聞くだけ野暮だ。
「どうぞ、3000ベリーになります」
「···、は?」
値段を聞いたローは、珍しい薬草のはずなのに破格の安さに素っ頓狂な声をあげた。
「···、え?」
は何おかしな事を言ったのだろうかと不安になるが、ローがポケットから財布を出して受け皿に置いた様子にホッと肩の力を下ろした。
「いや、払おう。邪魔したな」
「お買上げありがとうございました」
カランカランと、ローがいなくなった瞬間には床に座り込んだ。