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ネコの運ぶ夢

第9章 お仕事ネコ


☆☆☆
講演会の片付けを終え、責任者である俺と朝霞くん、庄司くんなどのメインスタッフ以外のほとんどは現地解散となった。俺たちは一旦会社に戻って終了報告くらいはしないといけない。

まあ、それでも退社時間はいつもと同じくらいだ。
会社のエントランスで、適当な言い訳を付けて朝霞くんと庄司くんを引き離すと、俺は音子との待ち合わせ場所に急いだ。
あまり待たせると、また不安になるかも知れないと思い、自然と足が早まる。

待ち合わせ場所が近づくと、音子がベンチに座っているのが見えた。よかった。普通にちゃんといた。安心して歩調を緩める。

音子も俺に気づいたようで、ぱっとこっちを見たので、軽く手を振った。
音子も大きく手を振る。

「いーちーのーせーさーん!!!」

大声で俺の名を呼ぶと、ダダダダダダ〜っと猛然とダッシュしてくる。

なんだ!?抱きついてくるのか!?

ところが、飛びつかんばかりに突っ込んできた音子だったが、予想に反して俺の胸元を両手でガシッと掴む。

え?!

そしてそのまま顔をぐっと胸元に近づけると、くんくんと匂いを嗅ぎだした。
「ちょ・・・おま・・・何して・・・?」
あまりの戸惑いに言葉にならない。しばらくくんくんとすると、「うーむ」と唸り、やっと解放された。

なんだ、なんだ!?

「いや、変な匂いがついてないかと・・・」

なんだ・・・変な匂いって・・・。
そして、どうやらその「変な匂い」とやらはついていなかったようだ。

これで終わりか、と思ったのだが、一緒に変える道すがら、地下鉄の中、帰り道を歩いている時、事あるごとに、

「今日は、両手に花でしたね」
「美人さんが多いですね」
「お洋服直してもらっていましたね」
「みんな優しそうな女の子ばかりですね」
「音子とは手も繋いでくれなかったのに・・・」
などなど・・・。

こ・・・これは・・・。

『お外のネコちゃんと遊ぶと、お家のネコちゃんが嫉妬しちゃうかもですね。』
朝霞くんの言葉が鮮明に蘇る。

こんなふうになるものなのか。ヤキモチってやつか!?

最寄り駅を出ると、「手繋いで」「腕組んで!」とさらに身体を近づけてくる。なんとか、引き離そうとする。
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