第7章 七夕に願うネコ
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買い物のあと、デパートの中のカフェに立ち寄る。昼をだいぶ過ぎていたので、すぐ入ることができた。
俺はパスタランチ、音子はドリアランチを選んだ。
様子が若干おかしかった音子も、やっと元の調子に戻ったようで、食後のデザートまで元気に平らげた。
ゆっくり食べたこともあり、時間は4時を回ろうとしていた。そろそろ外も涼しくなっただろうか。それじゃあ、帰ろうかということになり、デパートの1階に降りると、何やら浴衣姿の女性が多いことに気づいた。
「なんだろう?お祭りでもやってる?」
「市ノ瀬さん!七夕やってるみたいです!近くに神社があるんですか?」
ああ、なるほど、七夕で縁日みたいなのがあるのだろうか?
よく見ると、駅の方から浴衣を着た男女が大勢歩いてくる。
この近くに神社があったな、そう言えば。
「行ってみるか?」
「はい!」
音子は元気よく返事をする。日も陰り始めたし、ちょうどいい散歩道だ。
神社はだいぶ賑わっていた。
期待していたようなお祭り的な縁日はなかったが、七夕のご祈祷や祈願、ということで人が来ていたようだ。境内に入ると、木が多いせいか、人は多いものの、少し涼しく感じる。
「市ノ瀬さん!あっちで笹に短冊をつるせるみたいです!行きましょう」
音子が俺の手を引く。
よかった、なんだか、ちょっと様子がおかしかったから心配をしていたが、すっかり元通りだ。神社のは辛いだろうか、テーブルとマジック、短冊がたくさんおいてある机があり、ご自由にどうぞ、的な感じだ。
短冊は、音子がピンク色、俺は黄色を選んだ。
さて、何を書こうか・・・。
音子は、身体で短冊を覆うようにしてこっそりと願い事を書いているようだ。まあ、お前の願いは見なくてもだいたい分かるぞ。
「市ノ瀬さんとずっといられますように」的なものだろう?
俺は・・・。短冊に、願いを書く。名前も「市ノ瀬直行」と。
神様が、かなえてくれるってなら、お願いしたいところだ。
音子も書き終わったらしい。笹に結びつけようとする。つい、音子の短冊を見ようとすると、さっと背中に隠されてしまう。
「見ないでくださいね。見ちゃダメですよ。えっち」
いや・・・えっちって・・・。