第7章 七夕に願うネコ
明るい空色で、端っこにネコの意匠が施してある。折りたたみで軽いし、持ち運びもしやすい。晴雨兼用ではないようだが、UVカットの機能が高いのもいい。
柄の部分に、肉球がついている。
音子に、ぴったりだ。値段も6,000円弱と、まあ幅の内。これにしよう。
「おい、音子、これでいいか?」
俺が声をかけるのを聞いて、女性の店員がちょっと笑った気がした。
そうだな。音子に、ネコ柄の傘だもんな。ベタだったか?
音子はちらっと見ると、大きくブンブンと首を縦に振って頷く。
そして、「ちょっと、音子は・・・おトイレに行ってきます・・・」
と言って、ざっと駆け出してしまった。
なんだ、我慢していたのか?早く言えよ。
支払いを済ませると、店員が「すぐお使いになるなら、タグを切りますが?」と言ってきたので、お願いした。
しばらくすると、音子が戻ってきた。
「ほら、これ、すぐ使えるようにしてもらったぞ」
日傘を差し出すと、音子は受け取った。
これまでの傾向と対策からして、ここで「いやったー!!!」などと叫びだしかねないので、若干身構えていたが、音子は日傘をギュッと抱きしめるようにすると、ポツリと、言った。
「市ノ瀬さん・・・ありがとう」
そして、そのままぎゅぎゅぎゅっと抱きしめてしばらく動かなかった。