第2章 弱音

しかし次の瞬間、雅の額はこつりとジュンスの胸元に凭れかかった。

「…雅？」
「友人の距離でいいから…少しだけ…こうしてて…」
「…ん」

縋りつくように上着を握りしめる手はゆっくりと震えながら広い背中に回っていく。ただ、ジュンスの腕は雅の小さな背中に回ることはなかった。

「…ジュンスが…悪いんだからね？」
「なんで？」
「優しくしないでって言ったのに…」
「優しくしたから？」
「…そうだよ…」
「分かった。」

短いような…長いようなその時間の中、ゆっくりと雅はジュンスの胸を押して離れた。

「…ごめんね…甘えて…」
「僕はいつでも言ってるけど？甘えていいって」
「…ｯｯ」
「…そういうの見せてくれて嬉しいから」
「ジュンス…」
「…寂しかったんだろ？」

その一言でドクン…っと雅の鼓動が跳ね上がる。

「…そんなことない…」
「じゃぁなんで僕に巻き付いて来たの？」
「…それは…」
「さっき雅いったよね？『甘えた』って…寂しくなかったなら甘える必要ないんじゃない？」
「…ｯ」

少しだけ意地悪そうに、それでも雅の心を見透かす様にグッと心をつかんでくるジュンスの言葉は、ここ最近聞かない程に甘く優しいものだった。

「…ジュンス…」

喉が渇く…声が掠れて、消えそうなほどの呼び方になったことに雅自身も少し驚くように震える指を両手で包んでいた。