第4章 深すぎず浅すぎず、近すぎす遠すぎず
休み時間。
は校庭の端の桜の木の下で一人で座っていた。
すると、
ボブカットの元気な女の子が駆け寄ってきた。
「ねぇ!ちゃんって言うんでしょ!?」
突然の元気な声に驚いて、
は瞬きをした。
「……うん……そうだけど……」
「わたし、みさき!
一緒に遊ぼ!!」
あまりの勢いに、
の心の壁が一瞬抜け落ちた。
「……いいの……?一緒に……?」
「いいよ!
ちゃん、なんか大人みたいでカッコいいじゃん!」
(……大人みたい……?)
誰かに「いいね」と言われる感覚が新鮮で、
胸がじんわり温かくなる。
「じゃあ……少しだけ。」
その日、は初めて
“友達”と呼べる存在と出会った。
⸻
学校が終わり、帰り道。
不安でいっぱいだった胸は、
朝より少し軽かった。
「ただいま……」
玄関を開けると、
ジーニストが本を閉じて振り向く。
「おかえり、」
その一言に、
全身の力が抜けるような安心感が走る。
「今日の学校はどうだった?」
「……ともだち、できた……
みさきちゃんっていう子……!」
ジーニストは微笑み、
頭を優しく撫でる。
「それは素晴らしいことだ。
よく頑張ったな。」
の胸がまた温かくなる。
(……言ってよかった……
“ただいま”って……)
その日の夕食は、
いつもより少し賑やかに感じた。