第3章 はじめましての訓練
ホークスは、の生活を支えるように毎日そばにいた。
午前中は軽い個性観察。
幼いにとっては、遊びの延長のようでもあった。
「これ、痛そう?」
「うん……ちょっとだけ……」
そう言ってが手をかざす姿に、ホークスは腕を組んでじっと観察した。
「今日は昨日より光が強いね。いい調子だよ」
褒められると、の胸がほんの少しだけ温かくなる。
午後は机の上で絵を描いたり、簡単な勉強をしたり、公安のカウンセラーと話したり――
の心を壊さないように、スケジュールが組まれていた。
夜はホークスが読み聞かせをしてくれることもあった。
「今日はこの本。冒険ものがいいかな?」
「……うん……」
まだ幼いにとって、彼は兄であり、守り手であり、唯一の安心できる存在になっていった。
個性の訓練は、最初はとても軽いものだった。
の心のスピードに合わせて、ホークスは無理をさせない。
「今日は、羽を一枚だけ触ってみようか」
ホークスは背中の赤い羽を一枚だけ抜き、手のひらにのせる。
はそれをじっと見つめた。
「……これ……こわくない……?」
「怖いと思ったらすぐ言って。すぐやめるから」
は小さく息を吸い、羽にそっと触れた。
その瞬間、温かさが流れ込む。
治癒とは違う、別の“何か”が指先に吸い込まれる感覚。
「……ほわって……した……」
「それが個性の“共鳴”だよ。ちゃんの個性は優しいからね」
ホークスは笑う。
その繰り返し。
羽に触れる日もあれば、触れない日もある。
の気持ち次第で訓練は進んだ。
徐々に、ホークスとの距離は縮まり、
は彼の存在を“怖くない人”として認識していく。