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足元に吹き抜けてく花びら

第1章 出会いは病院で


桜が散り始めた春の最中。

公園では三人の青年が、子供たちに紛れてサッカーをしていた。

その公園前の道を、一人の女性が歩いていた。片手に松葉杖を握り、もう片方の手で重いキャリーカートを引いている。

陽気のせいか、荷物の重さのせいか、女性の額にはうっすらと汗が滲んでいた。
公園の入口に差しかかると、女性は立ち止まり、斜めがけのバッグからお茶の入ったペットボトルを取り出した。


公園の入口に差しかかると、女性は立ち止まり、斜めがけのバッグからお茶の入ったペットボトルを取り出した。
キャップを開けて、喉を潤す。

賑やかな公園には、サッカーに興じる青年たちと、はしゃぐ子供たちの声が響いていた。
その中の一人、鮮やかな赤髪の青年は、さっきから視界の端に入り込んでくる女性の姿が気になっていた。

(片松葉…?)

風に揺れるパープルブラウンの長い髪。年上と思しき彼女の存在が、妙に目に残る。説明できない感情が胸の奥を揺らした。

黄色いインナーカラーが特徴的な青年も、同じように彼女の姿に目を留めていた。

(松葉杖だからかな…)

そう思いながらも、なぜか気になって仕方がない。

黒髪の青年もまた、片松葉でキャリーカートを重そうに引く彼女の姿に、無意識に視線を向けていた。

三人とも、彼女の存在が気になっていた。
けれど、誰一人としてサッカーの足を止めることはなかった。

ただ、何となく――
彼女の姿が、妙に視界に残り続けていた。

女性は喉を潤すと、キャップを閉めてペットボトルをバッグにしまい、再び歩き出そうとした。


その時だった。
「あ…」
女性は視界が揺れているのを感じた。

その瞬間――

「危ない!」

声と同時に駆け寄り、彼女を抱きとめたのは、赤毛の青年・千切豹馬だった。
彼の腕の中で、女性は意識を失っており、顔は青ざめていた。

その騒ぎを聞きつけて、黄色いインナーカラーの青年・蜂楽と、黒髪の青年・潔が千切の元へ駆け寄る。

「潔、彼女の杖とカートを。蜂楽は子供たちを頼む。俺は救急車を呼ぶ!」

潔はすぐにカートへ向かう。蓋が開いており、食材が地面に散乱していた。
彼は丁寧に荷物を拾い集め、松葉杖を千切に手渡す。

千切はすでにスマホを取り出し、救急隊員と通話を始めていた。
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