第10章 恋柱

【煉獄杏寿郎 視点】

恋仲になった
想いを伝えた事でさらに強くなれた気がする

あれから贈ったあの簪を毎日付けてくれている

今日もゆあの部屋の前にくると
鏡の前でくるりと回っているのが見える

“この姿が愛らしくて堪らないな”

頬が緩むのを感じながら声をかける

「おはよう！朝餉を食べに行こう！」

「おはよう、杏寿郎さん」

「うむ、やはり名で呼ばれるのは嬉しいな！」

想いを告げたあの日、
“これからは杏寿郎と呼んでほしい”
そうお願いした

それからは名前で呼んでくれている


「杏寿郎さん、私相談があるんですが」

「ん？なんだ」

「私も朝の鍛錬してみたいです。あ、剣士や継子になりたいとかそういうんじゃなく、自分の身を守れるようなものを身につけたいというか…ダメですか？」

顎に手を当てて、しばらく考え込む
鍛錬に参加したいのはいい心がけだと思う
だが、自分の身を守る為という言葉が
引っかかる

“そんな危険な場所に行くのか？”

そう思ったが、お館様の言葉を思いだす

“ゆあには素質がある”

「そうだな…よし！これから毎朝一緒に鍛錬しよう！」

「杏寿郎さん、ありがとう」

と言って抱きつかれる
思わず頬が緩みそうになる

「恋仲とはいえ、俺は厳しいぞ？」

「頑張るから…杏寿郎さん…」

ゆあ、囁く様な声で言うのは
ズルくないか？
そんな事を思いながら抱きしめ返していた