第9章 思いの丈
ゆあ と並んで歩く
家からほど近い場所に墓はある
花を手向けようと見ると
すでに新しいものが入れてあった
“父上…母上のお墓参りだけは欠かさずいらしているのですね…”
ゆあ も花に気づいたのか
線香代わりに花束を置いてくれた
そしてゆあと共に手を合わせる
“母上、今日はご報告がございます。とても大切な人ができました。母上のように芯の強い女性です。父上にはまだ報告はできていませんが、どうか母上に立ち会っていただきたく今日は連れて参りました。うまくいくよう、見届けて下さい”
そう母上に伝え終えると
立ち上がり、ゆあ の方を見る
「 ゆあ、遅くなってすまない。どうかこれを受け取ってほしい」
先程買った簪を差し出す
「 ゆあ の事は、初めてあったあの日から好きだったように思う。だが自分の気持ちがはっきりと分かったのは柱合会議の時だ。あの時からきみを守りたい、いつも笑っていてほしい、そう思っている」
「 ゆあ、好きだ」
自分の気持ちに正直に、ただ伝えるだけが
だいぶ遠回りをしてしまったように思う
拒絶されるのではないかと不安だった
冨岡に嫉妬したりもした
きみの行動に一喜一憂する俺がいた
だが、今はただ真っ直ぐに気持ちを伝えた
ゆあ の目から涙が溢れる
その涙を手で拭おうかと手を伸ばしたが
ゆあ は自身で涙を拭うと、微笑んで
俺の手から簪を受け取ってくれた
「私も杏寿郎さんが好きです。この先何があってもずっと一緒にいたいです。病める時も健やかなる時も、支え合っていきたいです。」
“母上、見届けてくれましたか?俺も母上と父上のような夫婦になれるよう精進します”
そう母上の墓前に誓って
俺はゆあを抱きしめた