第8章 煉獄家
「ゆあ こっちだ」
そう言う煉獄さんの後についていく
通された部屋は立派な和室だ
「お待たせしました、座ってください!」
千寿郎くんに促され座卓を囲む
千寿郎くんが口火を切る
「兄上にまさかいい人がいたとは知らず、こうして紹介していただけて嬉しいです!結納などのご相談でいらしたのですか?」
ニコニコとしながら聞かれる
“ん?今、結納って言った?”
「ハハハ!千寿郎すまない!俺がまだ想いを伝えられずにいてゆあ とは恋仲ですらないのだ!」
“え?想いを伝えられずって…それって…”
煉獄さんの方をチラッと見る
煉獄さんは千寿郎くんの方を見たまま続ける
「だが、千寿郎がそのように言ってくれて大変嬉しく思う!千寿郎には苦労をかけているからな…」
煉獄さんが眉を下げ
少しだけ寂しそうな顔をする
千寿郎くんはというと
顔を真っ赤にしている
「兄上!ゆあ さん!勘違いをしてしまい、失礼しました!兄上が隊士の方以外で女性を連れていらしたことがなかったものですから…そのてっきり…」
そう言うと私に頭を下げる
私はというといろいろと混乱していた
“えっと…煉獄さんは私の事を好きでいてくれていて…千寿郎くんはそれを喜んでくれていて”
私は?私はどう思っている?
自分の事がさっぱり分からない
それは気持ちを押し殺して
生きてきたからだと思う
自分の気持ちに素直になる事が怖かった
それを拒絶される事の怖さを知っているから
でも、煉獄さんが私のことを
好いていてくれている事はとても嬉しかった
「千寿郎くん、頭をあげて。確かに今は恋仲でもなんでもないけれど、私も杏寿郎さんの事が好きだから!だから千寿郎くんも仲良くしてくれると嬉しいな♪」
千寿郎くんに笑顔が戻る
「はい!ゆあ さん、仲良くしてください!」
それから大学いもを食べながら
楽しく談笑した