第8章 煉獄家
【煉獄杏寿郎 視点】
先程からゆあがこちらをじっと見ている
目を開けようにも
こうも見つめられていては開けづらい
だがこうして寝たふりをしているのも
なかなかに辛い
「そんなに見つめてどうした」
目を瞑ったまま声をかける
「煉獄さんいつから起きていたんですか?」
あたふたしているのが伝わる
「きみより先だが?目を開けようにも、きみに見つめられていると、開けられずにいた」
「ごめんなさい…」
そう言うとゆあは視線を逸らして体を起こす
それから「おはようございます!」と
挨拶を交わした
ゆあ の着替えが終わるまで
女主人と歓談していた
今までは藤の家紋の家の主人達と
話すことなどなかったので
これもゆあの影響かと思う
着替えを終えたゆあが現たので
こちらに来るよう手招きする
用意されていた膳の前に座り
食事をはじめる
「 ゆあ 、今日は家に帰ったら弟を紹介したいと思う」
昨晩考えていた事を話す
「煉獄さんに弟さんがいたんですか!?」
「あぁ!母屋に父上と二人で暮らしている!」
「そうだったんですか。ご挨拶が遅れて申し訳ないなぁ」
「いや、俺もきみも忙しくしていたからな!中々、時間が合わず仕方がない」
「あの、煉獄さんのお父様にはご挨拶しなくていいんでしょうか」
…まぁ、そう考えるな…
本当であれば父上にも会わせたいが
きっと酒を飲み不機嫌にしているだろう
「父上は訳あって今は人に会わない。だが、その気遣いには感謝する!」
「そうですか…弟さんに会えるの楽しみです♪」
ゆあは何かを察したのか
それ以上深くは聞かないでくれた