第16章 音柱
祝言に向けて準備が進められていた
「ゆあ、本当に希望はないのか?」
そう杏寿郎さんに訊かれるのは
今日だけで何回目かという位だ
「先程も言いましたが、私はこの時代の祝言がよく分からないですし、瑠火さんの白無垢が着れて、気心知れた方に同席していただければ十分です」
「だがな…」
「お気持ちは嬉しいですが、それ以上でも以下でもないので、あとはよろしくお願いします!」
そう言って部屋から追い出すが
またすぐに戻ってくる
「ゆあ、本当に希望は…」
被せ気味に言う
「分かりました!そしたら、杏寿郎さんからの恋文が欲しいです!それも、本一冊になるくらいの長〜いので、お願いします!」
「本一冊の恋文!?」
「そうです!希望は伝えました!楽しみにしていますね♪」
そう言ってまた部屋から追い出した
“全然書き物が進まない…”
祝言が決まってから日取りなど
諸々を決め始めていた
お父様も杏寿郎さんも
男所帯だから何かと気が回らないのでと言って
希望を聞いてくれた
私の希望は瑠火さんの白無垢を着る事と
気心知れた鬼殺隊の方に来て欲しい
それだけなのだが
二人は私が遠慮していると思っているらしい
“追加の希望も伝えたし、大丈夫かな?”
こうして再び書き物を始めた