第13章 推しと好き(爆豪勝己)
「……っ……」
意図的に、逸らされた。
え、なんで?
もしかして、嫌われるような事……した?
それとも怒ってんの?
え?どっち?
……えぇ……?
でも、なんかちょっと悲しい……避けられてるみたいで。
「席着け、ホームルーム始めるぞ」
教室に入って来たざっぴーの一言で、私は現実に引き戻された。
「あ、甘井、これ終わったら職員室来てくれ」
「……はぁ……」
推してるざっぴーからのご指名だというのに、私は自分の席に着きながらなんとも気のない返事をしてしまった。
なんでだろう。
いつもなら嬉しいはずなのに、今はそんな事を考えられない。
ど、どうしよう……?
ホームルームの内容なんて、何一つ頭に入って来なかった。
「失礼しまーす」
私は、言われた通りに職員室に来ていた。
「お、甘井来たか。……これなんだが、クラスの奴等に1部ずつ配っといてやってくれ」
ドンと机にプリントの山を置かれたので、私はそれを抱えた。
「……分かりました」
そう言って、職員室を出ようとした時「甘井」とざっぴーに呼び止められた。
「はい?」
まだ何か用があるのかと思って、顔だけ後ろを振り向く。
「具合でも悪いのか?」
唐突にそう言われて、別にそんな事なかったので首を横に振ると、「そうか」と言葉が返ってくる。
「いや……今朝お前、話しかけてこなかっただろ。……単純に、気になった」
「……はぁ……」
推しに気にされたら、誰だって喜ぶってもんだ。
いつもの私なら、「マジ!?ざっぴー、好き♡」とめちゃくちゃはしゃいだかもしれない。
けれど、今日はなんだか違うみたいだ。
嬉しいは嬉しいけど、そんな事に構ってられないっていうか……
爆豪くんの所為だ。
昨日は優しくあんな事してきたくせに、今日はあんなそっけない態度、するから……
気になっちゃって、仕方ない。
私の心の中は、すっかり爆豪くんに占拠されてしまっているみたいだ。
「たまたま気付かなかっただけだと思う……失礼します」
推しに向かってなんともまぁ気のない返事をして、私は職員室を出た。
教室に向かいながら、考える。
何だろう、この気持ち。
推しとか、そんなんじゃない。
あれ?これ……
私、爆豪くんの事……
す、好き……?