第10章 男女問題はいつも面倒だ(爆豪勝己)
それから、一週間後。
勝己はいつものようにパトロールをしていた。
ふと、通り過ぎようとしたパン屋に目をやると、その中に見た事のある人物を発見してしまう。
レジ横のカウンターで、頬杖をついてぼんやりしていたのは甘井繭莉。
何だ、アイツ。
こんな所で……
パン屋と、何故か店番?をする繭莉。
この訳の分からない組み合わせが気になって、思わず中に入ってしまった。
「いらっしゃいま……せ、先輩?」
「お前、何やっとんだ?ついに転職でもすんのか」
「あ、えと……」
繭莉の説明だと、こうだ。
ここのパン屋は、夫婦で切り盛りしている。
しかし、今朝急にレジ担当の妻がギックリ腰になったらしい。
たまたま、買い物に来ていてその現場に居合わせた繭莉が彼女の腰が治るまでレジをすると言ってしまったらしい。
まぁ、ヒーローの本質は人助けだ。
悪いとは思わないが、ベストジーニストはこれを容認しているのだろうか。
というか、ヒーローよりもこっちの方がお似合いなのでは……。
「ジーニストの許可は、いただいてます……」
最後に弱々しくそう付け加えた繭莉。
別に、人助けをしているのだから責めるつもりもないが彼女は勝己にヒーローのくせに何をしているんだと怒られるとでも思っているのだろう。
「あの、すみません……」
と、何故か先に謝る始末だ。
「別に、お前がパン屋になろうと何になろうと俺には関係ねぇわ」
「そ、そうですよね……すみません」
と、また謝る。
「ヒーローよか、こっちの方がいいんじゃね?」
繭莉にヒーローは似合わないと、勝己は思っていた。
どこがと言われると分からないが危なっかしい所が、どちらかと言えば要救助者の方がお似合いだ。
良く言えば、護りたくなるのだ。
「お前、似合わねぇよ。……ヒーロー」
つい、本音がポロっと出ていた。
この勢いで好きだと付け加えてしまえばよかったのだけど、残念ながらそれが出来ずに沈黙してしまう。
「……そう、ですよね……」
繭莉が、弱々しく笑った。
「私、先輩の言う通りヒーローに向いてないって、分かってます」
別に、そんな顔をさせたかった訳じゃないのにその表情は暗くなる一方だ。