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The usual one【ヒロアカ中心】

第8章 恋人ごっこ(ホークス)


 「……は……」
 
 気付いたら、朝になっていた。

 遠くから、ドライヤーの音が聞こえて繭莉はもう起きていたのかと思いながら、寝起きのぼんやりした頭で取り敢えず服を着た。

 やがて、ドライヤーの音が止まって、繭莉が頭を押さえながら部屋に入ってきた。
 「……頭イタ……」
 「大丈夫?」
 「……ん……」
 冷蔵庫を開けながら、頷く繭莉

 昨晩の事を思い出すと、何だか柄にもなく照れ臭くなってしまう。
 「繭莉あのさ、」
 「……なに」
 俺の声に振り向いた彼女は、不機嫌そうな顔をしていた。

 「その名前で呼ばないでって、いつも言ってるでしょ」

 あれ……?

 「大体、会う約束なんかしてないよね」

 ちょっと、待ってよ。

 「それは繭莉が、」
 「だから、やめてって言ってんの」

 何?この展開。
 おかしくない?

 「だってあの時、言ったよね?俺の事、好きだって」
 「……何それ」

 繭莉の声は、驚く程冷え込んでいた。

 さっきと今……どっちが現実で、どっちが夢なんだろ。

 「覚えて、ない?」
 「言った記憶、ないけど」

 ……マジか……

 よく考えたら……酔ってたもんな、繭莉。

 「……ごめん……」
 つい、謝っていた。
 「私、学校行くから」
 繭莉は上着を羽織って鞄を肩に掛けると、部屋のドアを開けた。
 
 「鍵、玄関に置いてくからいつもの所、入れといて」

 振り返りもしないでそう言うと、部屋から出て行った。

 
 ……あー……

 やらかした。

 もう、あの感じじゃ繭莉はおろか、うららとも呼ばせてくれない気がする。

 そもそも、もう会ってくれるかどうかも怪しい。

 調子、乗んなきゃよかった。
 
 好きだ、なんて酔っぱらいの戯言と思って、聞き流せばよかった。

 ……真に受けるから……

 身体に染みついた彼女の匂いが辛い。 

 耳に残った甘ったるい声も辛い。

 ……こんなの、どうやって忘れろって言うんだ……

 「イタいなぁ……」

 そう呟いて、荼毘にまた何か言われるんじゃないかと思いながら立ち上がった。



 まだ、彼女の真意に気付く事なんてあるわけがなかった。
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