第2章 夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】
一緒に倒れ込むようにして、ルルはアキをベッドに寝かせた。
『…大丈夫ですか?…お水、コッチに持ってきますね…』
「いや、いい…」
長い腕でルルを抱き寄せるアキ。
『……あ、の……先輩…?』
「………悪い……少しだけ、こうしててもいいか…?」
呟くようにそう言って、彼女をきつく抱きしめた。
「……ごめん………ごめんな……」
何に対して謝っているのか、自分でもよく分からなかった。
たとえ命をかけたとしても、守ってやれない己の無力さか
破滅へと向かうルルを止めることも、連れて逃げることもできない現状か
そもそも、自分だけが生き残ってしまったことなのか……
考えても考えても分からない。
ただ、無性に許されたかった。他の誰でもない、彼女に。
『……』
ルルは、アキに腕まくらをするように体制を変えた。
「…ルル…?」
『……アキ先輩………大丈夫です。……私がずっと、そばにいます…』
小さな手が、優しく背中をさする。
『…先輩に、毎朝迷惑をかけて……一緒にお仕事をして……一緒にごはんを食べて………先輩のそばで、笑って…泣いて……面倒くさいことを頼んで……ずっと…先輩のことを困らせてあげます…』
彼女の優しい声が、アキの心を揺さぶった。
「…っ」
『……だから先輩は……安心して…私のこと、好きになってください…』
胸が一杯になったアキは、込み上げる涙を隠すようにルルの胸元に顔を埋めた。
「…フッ…………クスクス………なんだよ…それ…」
『……告白、です』
「…………ウン。………ありがとな…」
大きく深呼吸して顔を上げると、彼女の潤んだ瞳に弱気な自分が映っていた
ゆっくりと瞼が閉じて、一筋の雫がこぼれる
アキはその透明な跡にそっと唇を寄せた…
夜明けがくる前に…【早川アキ夢・前編】 終わり
──後編へ続く──