【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第8章 Unholy Devotion
仁美の前だと、濁りも苛立ちも消えていく。
「元気だって。ほら。」
無理に笑ってそう言った。
雑な誤魔化しでも、仁美は安心したように息をつく。
その仕草で胸が痛む。
彼女の優しさが胸に棘のように刺さった。
気づけば、黒尾の指が伸びていた。
仁美の頬にかかった髪を、そっと耳にかける。
やわらかい感触に指先に体温が残る。
「……クロ?」
突然の仕草に仁美は目を丸くし、次の瞬間、頬がゆっくり赤く染まる。
視線が揺れ、指先が制服の裾をきゅっと掴む。
(そんな顔されたら……崩れるだろ。)
胸が締めつけられる。
守りたくて、触れたくて、奪いたい。
矛盾が同時に心臓を掴む。
本当は大切で、本当は傷つけたくなんかないのに。
髪を離しながら、小さく息を吐く。
「……なんでもない。ただ……さ。仁美の顔、見たら……ちょっと落ち着いた。」
仁美の目が揺れる。
「え……あ、そっか……。」
頬を赤くしながら、言葉を失っている仁美。