第12章 君と幸せ
気がつくと、ベッドで寝ていた。
だいぶ気分がスッキリしていて、あの女に盛られたのはただの睡眠薬だったかとホッとした。セックスドラックとかだったらどうしようかと思った。
何とかして家の玄関までたどり着いたところまでの記憶はあるが、それ以降は覚えていない。
隣で犬のぬいぐるみを抱いて背を向けて眠っている鈴がベッドまで運んでくれたのだろうか。
「…起きたの?大丈夫?」
眠っていると思った鈴が薄目を開けて顔だけ振り向いた。
「うん。ごめん」
「玄関で寝ちゃったからベッドまで運んだの。重かった」
「だから、ごめん。…シャワー浴びてくるから寝てて」
風呂に向かいながら、背後を睨まれている気がしたが気のせいだろうか。
(……失態だな…)
理由はどうあれ、玄関で寝てしまった上にベッドまで運ばせるなんて。
やっとの思いで帰宅して、鈴の顔を見てホッとして何か口走った気がするけど覚えていない。
鈴が大切だ。大切で誰にも渡したくなくて、どうやったらこの気持ちが報われるだろう。
シャワーから戻ると鈴は形が変わるぐらい白い犬のぬいぐるみをぎゅうぎゅうに抱きしめていた。通称シロ。玉犬の白に似ていると言って彼女が買った物だ。