第10章 バスルーム ※
ざぁざぁとシャワーに打たれながら伏黒は虚しさを覚える。
一級術師に手に負えない案件だからと呼び出され、夜通しかかって呪霊を祓った時には朝日が眩しかった。
とどめとばかりに領域を展開したが、その後はいつもこうだ。この本能に従うままの衝動を抑えられず、自ら抜いていた。
同棲中の恋人の鈴をこんな時に抱くのも興奮を抑えるためだけのモノみたいに扱う気がして、気が引けた。大事だから、好きだから無理強いしたくない。
だから情けなくもこうやってシャワーに打たれながら彼女の顔を思い浮かべて自分で処理するしかなかった。
「ハァ…」
もう何度目なんだろう。ようやく落ち着いた気もしてバスタブに浸かったその時、風呂のドアが開いとかいって風俗に行くのは絶対嫌だし、そもそも彼女以外に欲情しない。
࿐༅ ࿐༅
「やだ、大雨……」
今日は非番。用事を済ませた後スーパーで買い物をして出てきた鈴は、空を見上げてため息を吐いた。
今日の天気予報は晴れのち曇りとかじゃなかったっけ?雨が降るなんて聞いてなかったから傘は持っていない。仕方なく彼女は雨に濡れながら自宅へ向かった。
彼氏と住む家は1LDKのアパートだった。
その彼氏、伏黒恵は昨夜から任務に出掛けていたけどもう帰っているだろうか。
ずぶ濡れになった鈴は、玄関に伏黒の靴があることを確認して安堵した。無事に帰ってきてるみたい。
「恵、ただいま〜」
室内からの返事はないが、疲れて寝てるのかもしれないと気にせずにそのまま洗面所に向かった。びしょびしょに濡れてしまったから早くシャワーを浴びたかった。