第7章 メイドカフェ ※
『鈴にしか頼めない事がある』
すべての発端は五条悟のこの一言だった。
授業の後、五条の部屋に行くといつもの軽い感じで極秘任務を頼まれた。
「鈴、メイドカフェでバイトしない?」
「はい?」
「なんかさー、秋葉原のメイドカフェで変な事続いてるらしくて、どうも呪霊の仕業っぽいんだよね」
「でも何で私なんですか?」
「だって元々高専は女子少ないし。真希や野薔薇じゃメイドカフェの接客なんて無理無理。むしろ鈴しかいないよー」
「でも私、弱いですよ。ちゃんとひとりで祓えるか…」
「だいじょーぶ!とりあえず調査だけでいいから。逐一僕に報告してくれたらいいようにするよ」
(結局、行くことになっちゃった…)
ひとりぼっちで任務なんてほとんど経験もないし不安しかない。それもメイドカフェって。
廊下をとぼとぼ歩いていると、背後から声を掛けられた。
「五条先生の話終わったのか?」
「はわぁ!…伏黒くん」
「何の話だ?任務?」
(相談してみようか。でもメイドカフェでバイトしながら調査するなんて言ったらどんな反応するだろう)
風俗ではないにしろ彼女がメイドカフェで働くなんて、絶対心証悪い。
「あ、うん。今度の任務の打ち合わせ…」
「釘崎が探してたぞ。デパ地下行く約束してたんだろ?」
「そうだった。おそろいのマスカラ買うの!」
調査だけなら数日で終わるだろう。別にいちいち言わなくたって伏黒くん怒ったりしないし。
しかし、それはあまりに楽観的だったことを鈴は思い知らされるのだ。