第5章 海水浴
波打ち際でビーチボールで遊ぶパンダと美少女は何かと注目を浴びた。
テレビの撮影?とじろじろ見ながら通り過ぎる人も多い。
「さすがにパンダは目立つわね」
「だからといって高専に置いて行ったら怒るだろ」
「あー、せっかく蓮見の水着姿拝めたのに…」
「悠仁、鈴に惚れてんのか?」
「そうじゃないけど、純粋にかわいいじゃん。伏黒より俺が先に出会ってたらなー」
伏黒と鈴に出会ったときにはもう二人はつき合っていた。入り込む隙がないぐらい想い合って信頼し合って。
もし、鈴が後から入学してきたらどっちを選んだだろう。
「伏黒に一票」
「私も」
「しゃけ」
「だよなぁ……」
虎杖のぼやき声は波に混じってよく聞こえなかった。
「見て見て!パンダ先輩、すごくきれいな貝殻!」
鈴が振り返るとパンダは子どもたちに囲まれてパシャパシャ写真を撮られていた。着ぐるみと間違われているらしい。
さっきまで一緒にいた伏黒を探す。彼は出店で何かを買っていた。人並みを避けて彼の所に行こうとするが、目の前を人垣で塞がれた。
にやにや笑いながら、若い男が三人立っていた。
「さっきから見てたけどすごくかわいいよね。どこから来たの?」
「すみません、急いでるんで」
お酒の匂いがする。酔っ払っいのナンパなんてタチが悪い。
逃げたいのにじりじりと迫られて、人気がない方へ追いやられる。
「いいじゃん、おにーさん達と遊ぼうよ。優しくするからさ」
絶対に嫌。
男の一人が手を伸ばしてきて、やめてと声を上げようとした。
「人のもんに何手ぇ出してんだよ」
冷淡な声がして、あっという間に男の人たちはボコられてひと山に積み上げられた。何だか見たことのある光景だった。
「伏黒くんてよく人を山にするよね」
「そうか?」
伸ばされた手を取ると、引き寄せられてぎゅっと抱きしめられる。
「急に姿が見えなくなったから、心配したんだ」
「ごめん。なかなか逃げられなくて」
そういえば今日はやっと二人きりだと伏黒は気がついた。