第3章 ××しないと出られない部屋 ※
ふと目が覚めたら、視界はすべて白だった。真っ白い壁に真っ白のベッドにシーツ。
例外は高専の制服を着た、自分と隣で眠る恋人で同級生の鈴だけ。
眠る前は何をしていたのか記憶を辿ってもまったく思い出せない。
任務の途中だったのだろうか。だとしたら呪霊か呪詛師の術式の影響なのか。
体に異常はないがあまりよろしい状況じゃないのかもしれない。
伏黒は周囲を調べようとベッドから降りて立ち上がった。
「ん…、伏黒くん…?」
「目ぇ覚めたのか。大丈夫か?」
「…ここ、どこ。私、何してたんだっけ…?」
どうやら鈴の記憶も曖昧らしい。
すぐに二人で部屋の中をくまなく調べたが、あるのはダブルベッドだけで白い壁で囲われていた。出口となりそうなものはない。
強行突破しようと式神を出そうとしたが、玉犬も鵺も呼び出せないし、殴ろうが蹴ろうがヒビひとつつかない。
かなりまずい状況なのではと伏黒は頭を抱えた。
「…結界術か…?」
「でも、呪力全然感じないよね。あー、天井に何か書いてあるよ!」
鈴が天井を見上げたのに続いて、伏黒も首を持ち上げた。
そこには口に出すのも気恥ずかしい一文が書いてあった。
"セックスしないと出られない部屋"
「…………」
「…………」
付き合っているとはいえ、まだプラトニックな関係。お互いに経験なんてなかった。
付き合っていればそういう想像をしないわけではないし、正直鈴で抜いたことはある。
だけれどこんな訳の分からない状況ではしたくない。絶対嫌だ。
「……出口探すぞ」
「…そうだよね!」