第1章 男の嫉妬は見苦しい!【エドワード・エルリック】
「やぁ、ごきげんようシェリー。今日も愛らしいね」
「きゃ!」
ーーーまただ、と思う。
エドワードは査定のため、ミシェルと連れ立って軍の施設を訪れていた。
しかし入館の手続きのためにほんの一瞬、ミシェルから目を離してしまった。
そして振り返ってみれば、これである。
偶然に同じ施設に来ていた大佐がミシェルの手を取り、その甲にキスを落としている真っ最中だったのだ。
「……」
もはやお決まりとなったやりとりである。
思えばミシェルと出会った日にも、大佐は同じことをやっていた。
もちろん戯れであることはわかっている。
それはミシェルも同じことだろう。
しかし冗談とはいえ、自分以外の男がミシェルに触れるのが気に食わない。
もっと言えば、大佐にキスをされて(手の甲だが)満更でもなさそうなミシェルの態度が許し難かった。
ーーーお前が好きなのは、俺だろ。
「帰んぞ」
エドワードは激情に駆られるまま二人の間に割って入り、ミシェルの腕を強引に引き抜ぬいた。
「エ、エド…?」
「おや、鋼の。ここに用があるのではなかったのかね」
「別の急用ができたんだよ」
そのままミシェルの手を引いて施設を後にする。
背後から大佐の押し殺したような笑い声が聞こえた気がするが、振り返らずにホテルへの道を早足で歩いた。
「ねぇ、エド」
「……」
「エド、エドワード。どうかしたの?」
半ば引きずられるようにして歩いていたらミシェルが、不安そうにエドワードの名前を呼ぶが、答えることなく無言で歩き続ける。
そうして部屋の前までやってくると、ミシェルの細い身体を扉の向こうへ押しやり、ガチャリと後ろ手に鍵をかけた。
誰かの侵入を防ぐためではなく、ミシェルがこの場から逃れるのを防ぐために。