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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第5章 仮契 〜契初〜


お互い服を着て、ベッドに横になる。自分の部屋に戻った方がいいのかと迷ったが、おいでと手を引かれたので、大人しく副隊長のベッドに入った。

「明日からはちゃんとしてや?今日ずっと固まっとるだけやったやろ。澪ちゃんからくっついてきて」

出来るかわからないが頷いた。副隊長だけが甘い雰囲気を出しても意味がないのはわかっている。でも、恥ずかしくてなかなか出来ずにいた。命を受けた以上、しっかりしないと。

「ちょ、今やない。突っ込むで」

私まだ酔ってるんです、だから私の甘えを受け止めて。好きな人にあんなことをされた後一緒にいて、おかしくならない方が変だ。

「まだ僕がどうなってるかわかっとるくせに…」

そう言いながらもぎゅっと抱き締めてくれる優しさに溺れていく。気にせんで…と腰を私のお腹に押し付けて揺らす。

荒くなり熱くなっていく吐息が額にかかる。次第に早くなる腰の動きに戸惑うばかり…触った方がいいんだろうか…。

「あかんっ、トイレ行くわ…」

我慢出来ひんと起き上がって寝室から出ていく。私だけ触ってもらって、何も出来なかった。恥ずかしいのに触れてもらえるだけで、心が満たされていった。

目を瞑って待っているとどのくらいかして副隊長が戻ってきた。私は咄嗟に寝たフリをした。きっと彼は自身を慰めてきた後なので、その後で接するのが恥ずかしかった。先程あんなことをしていたのもあるし…。

「朝霧?…寝たん?」

すでに名前では呼んでくれない。きゅっとなった胸を無視して、寝たフリを続けた。

顔にかかった髪を耳にかけられ頬を撫でられる。そのままその手は僅かな熱を伝えながら肩を撫でて、腕を通って手に辿り着き、指先を軽く握った。

額が合わさり、吐息がかかる。ごめん…と呟いた彼に胸が締め付けられた。副隊長にとってあれは、謝る行為だったんだ。

「同棲なんて、そんなん…してもええっちゅーことやろ。こない近くにおったら手出してまうんも当たり前や」

まるで自分の行為を正当化する為に並べたてるような呟きに、心臓が握り潰される。決して気持ちがあるわけじゃない、一緒に住んでるからいいのだと…そんな彼の本音だった。

指を握っていた手を離し背中に回して密着する。おやすみと呟いた副隊長はそれ以上何も喋らず、動かなくなった。
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