• テキストサイズ

偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第15章 愛縛 〜涙愛〜


「澪ちゃん、明日の会議が終わったらそのまま僕らは非番や。明後日も。僕の実家行くで」

隣に横になる宗四郎さんを見つめる。なんの為にご実家に行くのだろう。宗四郎さん一人でいいのではないか。そういえば…ご両親にはなんて説明したのだろう。もし本当のことを言ってないであれば、私も行かなければいけないだろう。

聞いてみれば、偽装だと言っているらしく、余計私が行く意味がわからなくなった。

「澪ちゃんが僕と実家に行けば、偽装も本物らしくなるやろ?気付く人らもいるはずや。僕らのこと」

演技の為らしく、二人でご実家に行けば、世間に本物だと見せつけられる。だから一緒に行って、出来るだけ二人で街を歩く。

全部、全部…偽物。わかってるのに…自分で引き受けたのに、辛くて堪らない。でも我慢すれば、この人を守れるのだと、自身に言い聞かせた。

宗四郎さんに背を向けて静かに涙を零す。この人には見せられない涙。この涙の意味が変わることはないとわかっていながら、願ってしまう。宗四郎さんの腕の中で、温かい涙を流したい。

宗四郎さんに抱かれる度に零れる涙は…嬉し涙じゃないの。私が泣いていることに宗四郎さんが気付いているのかはわからない。気付かないで欲しいと願うだけ。

「……澪ちゃん、気持ち良かった?」

宗四郎さんの声は弾んでいて揶揄っているのだと気付いた。これ以上何かを言えば声が震えてしまいそうで…うん、とだけ答えて何も喋らないことにした。
/ 410ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp