第14章 愛縛 〜抱愛〜
基地に着き、あかりん達と撤去作業を始める。
「澪さん、疲れてる?顔色悪いよ?」
「あかりん…ちょっと寝不足で…」
あかりんが大丈夫?と顔を覗き込んでくる。それに大丈夫と答えた。宗四郎さんが遅くに帰ってきてあんなことするから…朝も早く起こされてあんなに…受け入れた私も悪いけど。宗四郎さんは大丈夫だろうか。
そんなことを考えて、少しボーッとしながら作業を続けていると、肩に軽く重みが乗り、温かくなる。大好きな匂い。
「澪ちゃんが寝不足なんは、僕のせいやなぁ。朝も夜も……ん?」
「それ以上は言わなくていいです、副隊長」
何かいけないことを口走りそうだったので、慌てて口を塞ぐ。すると、顔が少し移動して、指を噛まれた。驚いて離そうとしたが、腕を掴まれていて離すことが出来ない。
「……朝霧て呼ばれたい?僕に名前で呼ばれたくないん?」
いきなりそう言われたので、意図がわからずに首を傾げる。
塞いでいた手は指を絡めて握られた。
顔を耳元にグッと近付けてきて、少し吐息がかかる。僅かに肩を竦ませた。
「…副隊長は嫌や。名前呼んで。澪…」
甘い声と吐息が直接、耳にかかる。慌てて引き剥がそうとしたが、この温もりが離れて欲しくないと思ってしまった。伸ばしかけた手が止まる。
近くで作業をしているあかりんは、困惑した表情を浮かべながら顔を真っ赤にしていた。偽装に見えないんだろう…私もそう思う。どうしてこんなにこの人は甘いんだろう?
演技にしてはセリフが本当っぽいからやめて欲しい…。
もしかして、あかりんが反応してるのって、"朝も夜も"って言葉!?
「ははっ、澪ちゃん真っ赤や〜…かわい。呼び捨てされると思い出すやろ?僕に抱かれとる時の……」
「ぎゃああああっ!!」
今はっきり言った!絶対周りに聞かれた!あかりんに関してはもう考えるのを諦めたような顔をしている。ジュラちゃんは、あまりよくわかってないようだ。
どうか…あかりんはこれを演技と思ってくれないだろうか…。
バクバクと忙しない心臓を治めるのに必死になっていた。