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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第14章 愛縛 〜抱愛〜


鼓動は治まることを知らず、ただ愛しい人の腕の中で、愛しい人を受け入れていた。

私の気持ち、聞こえてる?大好きなの。だから私も離さない。偽りに縋ってでも手に入れた関係。ここで離してしまったら、今までの苦しみが意味のなかったものになる。

苦しくても、辛くても、あなたの隣にいられるなら、それでいい。その事実だけがあればいい。だから、私以外の誰も、あなたの隣に置かないで…。

「澪の心臓の音、やばいなぁ…僕もやけど……ほんまに可愛い。どうしたらええ?壊してまいそう…」

耳元から顔を上げて私をジッと見つめる赤紫は、鋭い光を孕んで、熱を私にぶつけていた。

「っ、はぁ……締め付けんといて…久しぶりやし、やっと澪の中入れたから…ほんまに今、限界…」

その瞳が少し、熱に濡れた。
無意識だから許して…。

"久しぶり"という言葉に、ざわついた心が落ち着いていく。誰も抱かないという彼の言葉は本物だった。

少し光る宗四郎さんの額を見て、本当に限界なんだ…とボーッと考えていた。

「なぁ、澪…僕のどんなとこが好き?……教えて」

いきなりそんなことを聞かれ、胸がとくんっ…と反応する。そんなの…全部に決まってるのに…だけど、宗四郎さんはそんな答えじゃ満足しない。それはなんとなくわかっていた。

顔が熱くなり、目を泳がせる。改まって言うのは恥ずかしい…。

「つ、強くて優しくて…揶揄ってくるとことか、笑ってるとことか……嘘をつかないとことか……全部…宗四郎さんの全部」

「僕の全部好きなん?最高や……僕は…そんな君を、可愛ええと思っとるよ」

可愛ええ…嬉しいはずなのに、なんだか寂しかった。まだ、彼の気持ちは私にないのかな…。

目尻に涙を滲ませながら見つめていると、奥をグッグッと押し始めた。
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