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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


手を繋いで基地に来ると、私たちを見てヒソヒソと話す隊員たち。いつもと雰囲気が違った。

昼休憩になると同期の女子たちに連れていかれる。きこるんにあかりんにハクアちゃん……だけかと思ったら男子たちもついてきた。

「保科副隊長が浮気してるって本当!?」

廊下の隅に来るときこるんがすごい勢いで聞いてくる。みんなもそれを聞きたくて来たようだ。視線が痛い…。

「浮気…はしてないかな?まあ、いろいろあって…」

伊春くんが大丈夫か?と肩に手を置く。
さすがに何があったか言えないし、"アヤ"のことはよく知らない。

大丈夫、と笑ってみせた。

「保科副隊長はきっと、澪さんのこと大事に思ってるよ!」

あかりんが声をかけてくれたが、昨日のことを思い出して泣きそうになってしまった。

大事にされてるのはわかってる。それが今は辛い。

涙は見せられないと、グッと眉間に力を入れた。
次の瞬間、視界が真っ暗になる。ふわっ…と大好きな匂いが漂う。

「澪ちゃん借りてええ?」

みんなが返事をする声が聞こえて、私はそのまま連れていかれる。何も見えなくて怖いんですが…。

少しすると目元から手が離れて、手が温かさに包まれた。もっと触れて…嬉しいのに、もっと貪欲になっていく。
手を引かれながら大人しくついていくと、私が使っていた部屋に来る。

「今日はここにおって。帰って来んでええ。どうせ偽装結婚が終われば、ここに戻ってくることなる」

頷くことしか出来なかった。
私が身体を許せば、ずっと一緒にいてくれますか?ううん、私の気持ちがバレた以上、一緒にいられないんだ。私の気持ちは彼にとって、重い。

食堂に行こうと手を引かれて、いつも通りの演技がまた始まる。

偽りでもいいから、このままでいたいです…。



〈仮契:偽装結婚スタート編 ―終―〉
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