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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第81章 見せつけられる愛


道場を飛び出した後、熱くなった頭を冷やす間もなく、義勇がゆきの前に現れた。

義勇は謝ることも、言い訳をすることもしなかった。

​  「準備をしろ。やはり、お前も連れて行く」

​有無を言わせぬ雰囲気に、ゆきはただ頷くしかなかった。

朝、強引に掴まれた手首が、まだ熱く痛んだ…。

​待ち合わせ場所にいたのは、少し意外そうな顔をしたしのぶさんだった。

​「あら? ゆきさんもご一緒。富岡さん、二人で十分だと仰っていましたけれど」

​しのぶの微笑みに混じるどこか冷たい雰囲気…。私は自分が「歓迎されていない」ことを悟り、居心地の悪さに思わず俯いてしまった。

​「あの、しのぶさん今回の任務の内容を、私はまだ伺っていなくて」

​「あら、富岡さん、お話ししていないのですか?」

​しのぶはわざとらしく溜息をつき、任務の全貌を明かした。

​「今回の鬼は、仲睦まじい夫婦を好んで狙うのですよ。だから、宿に一晩泊まり、夫婦の振りをしながら誘き出し、斬る。そういう任務なのです」

​その言葉に、私の心臓が凍りついた。

​「じゃあ、私、いらないじゃないですか。お二人だけでいいのでは?」

​絞り出した声が震える。

二人が睦まじく夫婦を演じる姿を、私はただ側でじっと見ているって事よね…。
それならいっそ、道場に置いていってほしかった。わざともしかして、義勇さんは私を連れてきたの?見せつけるために…?

​  「黙っていろ。お前は…外で見張りだ」

​短く遮る義勇の横顔は、いつにも増して険しい。けれど、その瞳はゆきを捉えるたびに、苦しげに泳いでいた。

しのぶは義勇の腕をそっと取り、笑みを浮かべる。

​「ゆきさんは、冷えないように気をつけてくださいね。私たちは…部屋で『夫婦』としての時間を過ごさねばなりませんから」

​夜の帳が下りる。宿の一室から漏れる、二人の親密な話し声。

障子一枚隔てた廊下で、一人私は冷たい刀の柄を握りしめた。

​義勇さんは、私を苦しめたいんだ…きっと…

夜風が身体に当たるたび寒さが募る…。

「くしゅん」

寒い…朝までここか…部屋の中からしのぶさんの楽しげな声が聞こえてくる…。

義勇さんに貰った桜色の羽織が、寒さをしのいでくれている…なんて滑稽なの…

ただ月だけが綺麗に輝いていた。
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