第76章 奪い合い〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥【R】
「…っ、だめ、放してください…っ!」
ゆきは快感に震える身体を必死に震わせ、不死川の逞しい胸板を突き放した。
その瞳には、快楽よりも深い怯えと戸惑いがみえた。
脳裏に、任務へ向かう前の義勇の声が蘇る。
『…反省しているなら、戻るまでその部屋から出るな。不死川にもすぐに帰ってもらえ!』
継子として認められずなのに、義勇さんの言いつけを破っている罪悪感…
それにしのぶから投げられた言葉。
「しのぶさんに前に言われたみたいに、また私は無自覚に男の人を誘惑して回る、はしたない女だって…っ。私のせいだって言われる…。もう嫌なんです、こんなの…っ!」
山賊に襲われた過去さえ、自分の「誘惑」が招いた結果だと言われた…ゆきはボロボロと涙を溢れさせた。
だが、不死川はその震える肩を逃がさず、さらに強く抱きすくめた。
「胡蝶が抜かした戯言なら、俺も知ってる。あいつは、お前の危うさを分かっててわざと言ってんだ。だがな…
誰が何を言おうと、今のお前は誰の婚約者でもねェし、誰のものでもねェんだよ。冨岡の女でもねェだろ?外野の嫉妬も、全部俺が叩き斬ってやる。…今、お前を抱いてんのは俺だ。俺だけを見てくれ!」
「不死川、さん…っ」
「ゆき、お前がこんなに熱いのは、誘惑なんかじゃねェ。…俺が、お前を狂うほど求めてるからだ。全部、俺のせいにしてりゃいいんだよ」
再び胸元に顔を埋め、桜色のぴんと立つ先に舌を這わした…。
「お願いです!やめてください…」
畳を強く掴むゆきの震えは止まらず、その瞳には罪悪感と怯えしかなかった。
不死川は吐き出しかけた熱い吐息を飲み込み、力無く腕を解く…
「…あァ、分かったよ。もうしねェよ。…泣くな、わるかった…好きな女を困らせちまったな…」
乱れた衣を優しく整えると、不死川はゆきの頭をぽんぽんと撫でてから、ゆきの部屋を後にした。
屋敷の門を潜ろうとしたその時、任務から肩を揺らして駆け戻った義勇と正面から出くわした。
「不死川?まだいたのか!?」
「安心しろ、今帰るところだ。」
すれ違いざま、それだけを言い残して不死川は闇へと消えた。
こんな明方まで一緒に居たのか…?不死川から
ゆきの甘い香りがする…