第49章 無視〜冨岡義勇 時透無一郎
義勇は、中庭で二人の隊士達に囲まれていた。今声をかけないとと思い義勇を呼んだ。
「師範!」
一斉に二人の隊士の目が自分に向いた…。
義勇は、後ろを向いたままだった。
「何だ?」
「あ、あの…」
この二人の隊士の前で、外泊の話をするのが気まず過ぎて中々話せずに口籠ってしまった。
「話がないのなら台所に手伝いに行け、いつも楽しそうに手伝っていただろ?」
えっ?何…その言い方?何だか棘がある…。
「…はい…」
ゆきは、そのまま台所へ向かった。
あの隠とは、何も無かった事はわかったがやはり苦手で…(距離が近いからだ)まだお手伝いを近くですると震えてしまっていた。
‐‐‐‐
朝から俺はゆきの顔をまともに見れない…。
あいつは、俺に話しかけて来ようとするが俺はそれを無視している…。
どうも普通に、接する自信がない…。
台所に、手伝いに行けと言ってしまった。あの隠とは、何もなかったとゆき自身も理解しているが、近くに行くと体が震える…
俺はそれを、わかっていたのに意地悪を言ってしまった。
「柱…それでですね。」
二人の隊士達が、目をキラキラさせて義勇に色々話しかけていた。
義勇は、ゆきが気になりすぎて二人を置いて台所へ向かった。
台所の中を見ると、あの隠がゆきが持つ鍋を背後から一緒に手を添えて持っていた。
ゆきは、苦笑いして体が震えていた…。
‐‐‐‐‐
「ひ、一人で持てます」
「ダメです!危ないから…」
この人本当に距離が近くて…怖いよ…。
隠の顔がもうゆきの耳元に迫っていた。
「あれ?ゆき様やっぱり鍋重たいんでしょ?手が震えてますよ?」
怖い…怖い…怖い…離れて…
「あ〜腹減った〜」
一緒に稽古を受けた男性の隊士達三人が入ってきた。
一人の隊士がゆきから鍋をひょいと取り上げてくれて持って行ってくれた…。
それと同時に隠もゆきから離れた。
ゆきは、泣きそうになりながらさっと台所から走って出て行った。
胸を押さえながらその場にしゃがみ込んでしまった。
そんなゆきの様子を義勇は、遠くから見つめる事しか出来なかった。
涙を拭っている様子も見えた…。