第40章 狂った夜〜時透無一郎 冨岡義勇【R18強】
「うっ…」
握られる手首が、痛くて少し声をゆきは出してしまった。
その声に、無一郎は気づいて。
手を慌てて離した。
「いっ…た…」
力を入れすぎたせいで、手首が内出血して痣のようになっていた。食い込んだ爪の跡からも血がにじんでいる。
「…ゆきごめん…」
ゆきの目から沢山涙が、流れていた。
これは、手首が痛いからなのか?冨岡さんに、二人の秘め事を言われそうで泣いたのか…
どちらの涙なんだろう…。
「隠に、言っておくから手当てしてもらって…僕は蝶屋敷に行ってくる…必ず帰って来るから待ってて」
凛の所に、行くんだなと思ったけど【行かないで】なんて私に言う権利はない。
だけど、ほんとうに帰って来てくれるのかな?
気が付いたら、無一郎をゆきは後ろから抱き締めていた。
無一郎は、急な出来事で驚いた。
僕の体に、手を回したゆきの手首は、僕が傷つけた跡が痛々しかった…。
だけど、やっぱり優しく出来ない…
「離して…夕方までに帰って来たいから」
「あっ…うん。ごめんなさい」
「君と冨岡さんが、何するかわかんないし」
その言葉を、言った時僕を抱きしめるゆきの腕の力が緩んだ…。
絡まる手を、解いて道場を出ようとした時にゆきはいつも言わないような事を、言ってきた。
「無一郎くん…行く前に、あの…」
「何?早く言って」
「あの…口づけ…して…」
潤んだ瞳は、とても綺麗で
白い肌に桃色の少しふっくらした唇が食べたくなるくらいかわいい…
頬には、僕がボタンで傷つけてしまった傷がまだ赤く残っている。
とても、愛おしい君…
僕に、口づけをせがむなんて…
「何?冨岡さんとの事がバレたから僕に媚び売ってるの?」
「ち、違います…そんな訳じゃ…」
「とにかく、夜に戻るから」
無一郎は、道場から出ていってしまった。
蝶屋敷に向かうなか、無一郎はずっと後悔していた。
何で、僕は意地を張ったんだ。ゆきになぜ口づけしてやらなかったんだ…
だけどまだ頭がごちゃごちゃするんだ…。
許してね…ゆき…