第34章 それぞれの想い〜冨岡義勇 時透無一郎
無一郎は、隣の部屋に一人でいる凛の事が気になっていた。
戻って来ないから心配しているかも…。そんな事を考えていたら居ても立ってもいられずそっとゆきの隣を離れ部屋を出て行った。
部屋に戻ると凛がベッドの上で泣いていた。
「凛?」
「無一郎くん!」
凛は、無一郎に抱きついた。「ゆき姉様の所から帰って来ないのかと思ってた」
泣きじゃくりながら無一郎に、しがみついた。
僕の事をこんなにも慕ってくれてる凛を明日帰せるのか?そんな事を考えてしまった。
「凛…もうベッドで休んで。僕はあの…ここでは今日は眠らないから…」
凛は、無一郎から離れなかった。「嫌です!私と居てよ…」
こんなに泣いて甘えてくる凛は初めてだった。無一郎は、つい流されて凛と共に夜を過ごしてしまった。
明け方〜
寒さでゆきは、目を覚ました。隣にいるはずの無一郎の姿が無かった。
部屋に戻ったのかな?何かあったら部屋に来てもいいって言ってたし…
とゆきは、思い無一郎のいる隣の部屋に入った。
確か凛も同じ部屋に居るはず…
広い部屋にベッドが六つならんでいる。
奥のベットに目を向けた…。
「えっ?」 声が少し戻った自分に驚く間もなくゆきは後退りした…。
無一郎が凛を抱いて一緒に寝ていたからだ。
驚きすぎて部屋を飛び出し蝶屋敷の外にまで出てしまった。
外はとても寒かった…。
「おい!そんな所で何している風邪引くだろう?」
振り向くと不死川が立っていた。いつも朝方に玄弥のお見舞いから帰るのでばったり会ったのだった。
「泣いているのか?」
目を一生懸命ゆきは、擦って涙をこらえて不死川を見た。
「今回は誰に泣かされた?冨岡か?」
ゆきは、首を横に振った。
「時透か?」
その名前を聞いたとたん、ぶわっと涙が溢れ出た。
不死川は、ゆきを優しく抱きしめてあげた。
「何なんだよいったい…とりあえず部屋に戻るぞ!外は冷える」
不死川はゆきを部屋に連れて行った。
「声はどんな感じだ?まだ出ないのか?」
「…小さな声…なら少し…」
「おっ!!良かったじゃねーか」
不死川は、ゆきの頬に触れた。
「俺なら泣かせないけどなぁ…」
あいつら好きな女を泣かせすぎだ