第27章 刀鍛冶の里〜「義勇さん」 時透無一郎【R18】
無一郎ではなく義勇が立っていた。
「どうした慌てて?何があった?」
ゆきは、迷ったが義勇に話すことにした。
「私…記憶が戻りました…。」
「そうか…」
やはり戻ったのか…では、今まで俺がお前にしてきた事なども思い出したのであろう。
俺の欲望のままお前を求めて抱いて傷つけた事も思い出したのか…。
「俺は明日里を出る刀が仕上がった。お前は、まだ休暇取って里に居てもいいぞ。稽古は休みにしてやる」
「私のお館様からの命は、師範の刀を持ち帰る事なので一緒に帰ります。」
「時透と一緒に帰ってこればいい」
「無一郎くんには明日帰ると今から伝えます。」
「そうか…」
「では、失礼します。無一郎くんを探していますので」
ゆきは、足早に丘を降りていった。
すぐにでも拒絶されるのかと思っていた。俺と共に帰るなど言ってくれないと思っていた。
なのに、お前は…
それは、俺を師範として見ているからか?それとも俺を男として見てくれているからなのか?
俺にもまだ望みはあるのか?
ゆき……。
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無一郎くんどこに行っちゃったのよ…居ない何処にも…
色んな場所を探し回った。いつしか森の奥の川辺に来ていた。
こんな所に居るはずもないか…。
「えっ?」
長い髪が見えた。川辺に座っている無一郎だった。
ゆきが隣りに静かに座った。
「こんな所に居たんですね探しました。」
無一郎は、ゆきの方も見ずに話しだした。
「鉄井戸って刀鍛冶がいたんだけど、この場所で会う度に僕の心配をしてくるんだ。どうしてあんなに僕に構ったんだろう」
無一郎は、立ち上がり落ちていた石を遠くに投げた。
「無一郎くん…さっきは拒んでごめんなさい」
「別に…もういい気にしてないから」
無一郎がゆきに近づき静かに手を引きだきしめた。
「唇は僕だけのモノだから拒むことを許さない」
深く深く口づけを落としてきた。長い長い口づけだった。
「んっ」
やっと解放された時はゆきは息切れしていた。
無一郎は、ぎゅっと抱きしめた。
「明日新しい刀鍛冶の鉄穴森って人探すんだけど一緒に着いて来てよ」
「あの…無一郎くん…私明日に、帰るの…」