第26章 刀鍛冶の里〜「無一郎くん」時透無一郎【微R】
夢を見た…。誰かと誰かが抱き合っている…それを見て苦しくなる…
そんな夢だった。
目覚めると涙を流していた。
昨日の事が頭をグルグルと回る。私が時透さんと好き合ってたって事、それから…義勇さんが婚約解消する事…
それに、私を『愛してる』って言われた事……。
もう頭がぐちゃぐちゃになる…。
「ゆき起きてる?里の散策行くよ」
戸の向こう側から無一郎の声が聞こえてきた。ゆきは、慌てて昨日買って貰った義勇の手鏡を胸元に入れて部屋を出た。
「あれ?隊服着てるの?」
「何でですか?」
「今日は任務でもないからてっきり隊服以外の格好だと思ったよ」
そう言えばずっと隊服だな…私。昔は着物着てリボンとかつけてたのになぁ。
【えっ!?私今なに考えてたの?昔、私は着物を着ていたわ…リボンをつけて…お店で店番をしてた…】
そんな場面がゆきの頭をよぎった。過去の記憶…!?
急に立ち止まって動かなくなったゆきに無一郎は声をかけた。
「どうしたの?ほら行くよ」
「あっ、はい。すいません」
ゆきは、無一郎の後をついて行った。
昨日義勇に、手鏡を買って貰ったお店の前に来た。無一郎がお店に並ぶ手鏡に目が行った。
「そう言えば昨日大切そうに持ってた手鏡どうしたの?あんなの持ってなかったよね?」
「あ、あれは…昨日…師範に買って貰ったんです」
「ふーん。贈り物までしてるんだあの人」
「違うんです!私が欲しそうに見てたから買ってくれたんです…」
泣きそうな顔して必死に冨岡さんを庇ってる。やっぱりまだ冨岡さんに気持ちあるんだなと思い知らされる。
「お腹減った。何か食べよう」
〜~~〜〜〜〜〜〜
「時透さんは好きな食べものあるんですか?」
お団子を食べながらゆきが質問した。
「うん…ふろふき大根」
「そうなんですか?美味しいですよね」
「うん。それは覚えてたんだ」
「あっそっか時透さんも記憶が…」
「うん、すぐ忘れちゃうしね。でも不思議なんだけどゆきに、関しての事は忘れないんだ」
じっと私の手を握りながら見つめてくる…。どう反応したらいいか分からない…
「さ、里で景色がいい場所があるって昨日甘露寺さんに聞いたんです!行きませんか?」