第25章 刀鍛冶の里〜無一郎の到着 時透無一郎 冨岡義勇【R18】
いつも、時透さんの顔が浮かんでいたのは私の眠っている記憶が、義勇さんに抱かれるのを拒むためだったの?
あの頭の中で浮かんだ時透さんが私に『好きだ』って言葉は、本当だったの?
ゆきは、頭が混乱してきてその場にしゃがみ込んでしまった。
「ゆき取りあえず部屋に戻って横になろう」
無一郎は、ゆきを抱き上げた。そのまま部屋に連れて行った。
義勇は、心がとても不安になった。
あそこまで、時透が話したのならばもしかして、ゆきは思い出すかもしれない…だとすると忘れている事を良しとしてまた俺がゆきに近づいた事を疎ましく思うかもしれない…。
俺は、完全に嫌われるのか…。
こんなに好きなのに、愛しているのに…。やっと想い合えたと思ったのに…
全てなくなってしまうのか…。
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部屋に戻りゆきは、無一郎に寝かされた。
「時透さん…あの…」
「無一郎くん」
「え?」
「僕を無一郎くんって呼んでた」
ゆきが戸惑いをみせる。無一郎の顔をまともに見れない。
無一郎がゆきの隣りで横になった。
距離が近くてゆきは、思わずどきっとした。
「ごめんね」
「どうして謝るんですか?」
「ゆきが記憶を無くした原因は僕にあるから」
そう言ってゆきを抱きしめてきた。ゆきの鼓動がもっと早く波打つ。
胸の鼓動の速さに耐えきれなくなったゆきは、無一郎の腕から逃れ起き上がった。
「あ、あのまだ気持ちの整理が出来ないので話さないでください…いきなり沢山の事があって…とても混乱してます…」
「そうだね…ごめんね急がせたね。今夜はゆっくり眠って僕は別の部屋に泊まるから、冨岡さんにもゆきを一人で寝かしてあげるように言っておくから」
「ありがとうございます。」
「明日は里を散策する予定なんだけど気分転換に一緒に行こうよ」
時透さんと一緒に居れば何か思い出すかもしれない…。
「はい。ご一緒します」
無一郎は、無邪気な笑顔をゆきに見せてくれた。屈託の無いまだ少年の笑顔だった。
「朝にまた迎えに来るね」
部屋から出ようとした無一郎はまた戻ってきてゆきに紙飛行機を渡した。
「あげる」